炭の種類と製法・名称の由来
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黒炭
クヌギ・栗・樫(カシ)などの広葉樹の原木を土窯で
400℃~700℃前後の温度で樹質を炭化させ、
固定炭素が75%以上、精錬度が約2~8度の木炭です。窯内で消火させ窯出し後に土をかけて鎮火させる事で、
炭自体の表面が黒い事から黒炭と呼ばれ、
燃焼温度が低いので収縮度も低く柔らかい炭です。火付きは良いのですが、
火持ちが悪く原木によっては臭いが発生します。 -
白炭
姥目樫(ウバメガシ)・ナラ・クヌギ等の広葉樹の原木を、
レンガなどの石窯で900℃~1,200℃の高温で樹質を炭化させ、
固定炭素が85%以上、精錬度が約0~3度の木炭です。窯の外で灰をかけて消火させる事で、
炭の表面が白い粉をかぶって白く見える事から白炭と呼ばれ、
燃焼温度が高いために収縮度が高く堅い炭です。火は着きにくいですが、高温で遠赤外線効果が高く、
火持ちが良くて臭いが発生しません。 -
備長炭
白炭の製法で姥目樫・樫類を炭化させたもので、
固定炭素90%以上、精錬度が約0~2度の木炭です。名称の由来は、元禄年間(1688~1703年)に
和歌山県(旧紀州田辺藩)の炭商人「備中屋長左衛門」の
扱っていた白炭の品質が非常に良く、
その名前を取って備長炭の名称で販売されたのが、
備長炭の名称の由来と言われております。 -
紀州以外の備長炭
国産備長炭として、樫を原木にした宮崎県産の「日向備長炭」、
高知県産の「土佐備長炭」、ミズナラを原木にした
秋田産「秋田備長炭」などがあります。また輸入備長炭としては、マングローブなどを原木にしたインドネシアなどの東南アジア産「俗称、南洋備長炭」、マイ・テュー樹を原木にしたラオス産「ラオス備長炭」などがあります。
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オガ炭
木屑を主原料にして熱圧縮成型したオガライトを、
プラント窯にて約700℃以上で炭化させた人工の炭です。
固定炭素及び精錬度は、原料・原木の違いや
生産工場の能力などによりそれぞれ異なります。名称の由来は、原料の木屑(おが屑)の名称から「オガ炭」と
呼ばれており、中心に火が消えないための穴が開いている事から
「ちくわ炭」とも呼ばれております。中には、備長炭窯で高温炭化させたものを、
オガ備長炭と称しているものもあります。
炭火を使った料理が
美味しい理由
焼鳥や焼肉、焼き魚などを炭火で調理すると美味しく感じ、
ガス火で焼いた物とは明らかに味が違います。
同じ火で焼いたのに、炭にはどこにこの様な効果があるのでしょうか。
遠赤外線の発生について
炭火は「遠赤外線効果で美味しく焼ける」と言いますが、
熱を発生する殆どの物質は遠赤外線を発生しています。
もちろん、ガス火からも遠赤外線が放出されています。
遠赤外線とは分子エネルギーが振動(燃焼)して、
超高温になる事で放出される光線が光の外の周波数(赤外線の外)、
つまり「遠赤外線」になります。
そしてこの光線分子の振動が大きいほど遠赤外線を多く発生します。
ガス火は燃える事により熱を発生するのですが、
常に他の物質に変化をして行き、燃焼後に炭酸ガスと水蒸気になります。
加熱しながら水(水蒸気)をかけているのと同じ状態となり、
一定以上の遠赤外線を発生し続ける事が出来ません。
一方、炭は炭素で出来ています。
炭素は3,600℃の高温にも耐えられる物質なので多量に遠赤外線を発生し続けます。
備長炭は1,000℃以上の高温まで耐える事が出来るので、
ガス火とは桁違いの量の遠赤外線を出し続けます。
なぜ美味しくなるのか
ガス火では加熱される食材が火からの温度で直接加熱され、
火の当たっている部分を中心にして徐々に加熱されます。
そのため、肉や魚の場合は内側の肉汁が落ち出てしまい、
全体に火が通るまでに旨味成分が出てしまいます。
またガス火に含まれる水分により、
表面が水分を含んだベタッとした焼き上がりになってしまいます。
炭火、特に備長炭の高温で焼き上げた場合は、
近赤外線の効果で食材の表面が一気に過熱されて焦げ目を作り、
コーティング作用で旨味成分が密閉されます。
また、遠赤外線の高い加熱効果によって食材の内部から加熱され、
旨味成分をたっぷり含んだまま焼き上がります。
ガス火と違って炭には水分が含まれてない為、
表面はカラッ・パリッとして内部はジューシーになります。
さらに、備長炭の灰の成分に含まれる、
カリウム塩類やカリ塩類が含まれたアルカリ成分が食材に付着することで、
コレステロールや臭いの基になる脂肪酸が中和され、肉や魚の臭みを消して、
程良い木炭の香りと共に美味しく食べることができます。